書道の楽しさ、素晴らしさを伝え 時代に合わせた価値を創造していく

書家

上籠 鈍牛

字を読むことが困難な難読症でありながら、最年少で数々の賞を獲得し、書道界で高い評価を得ている書家の上籠鈍牛さん。文字の面白さや大切さ、そして書道の素晴らしさと時代に合わせた試みなどをお話しいただきました。

上籠 鈍牛

上籠 鈍牛(うえごもりどんぎゅう)

書家。字を読むことが困難な難読症(ディスレクシア障がい)を持つ。障がいゆえに字を書くのではなく空間を描く才能に長け、教育書道から芸術書道、米粒に書く細字から大字揮毫までと、あらゆる書体、規格で高い評価を得る希有の書家として知られる。書道の魅力をより多くの大人に知ってもらい、楽しく書に親しめる場づくり、仲間づくりをモットーに、書道教室兼アトリエ「銀座書道教室」を運営している。

日下部かなりインパクトのある書家名ですが、このお名前にはどんな由来があるのですか?

上籠“器用貧乏になるな”“牛歩の如く、地に足をつけて歩きなさい”という想いを込めて師匠がつけて下さいました。

日下部書道を始めたきっかけを教えてください。

上籠小学1年生のある日、友達の家で習字をして遊ぶことになり、「かえる」という字を書いたんですが、それがとても面白くて、親に習字を習いたいとお願いして、小学2年生から正式に習い始めたんです。
土曜日が習字のレッスン日だったのですが、当時やっていたサッカーの練習試合と重なるんです。自分はサッカーではなく習字がしたいと監督に伝えると、「じゃ、いつサッカーに戻ってくるんだ?」と聞かれたので、「一番上の段までとったら戻ってきます」と答えました。1年半で上の段までとれたので、サッカーも再び始めたのですが厳しい環境でした。
僕には一つ上の兄と六つ下の弟がいるので、精神力は自然と鍛えられる環境でした。兄の自転車の後ろを走って付いていくような子供だったので、持久走は速かったのですが、走っているときに、親の“がんばれ~”という声援が聞こえると、速く走れることに気づいたんです。それで速く走れるなら最初からもっと速く走れるはずだし、負ける理由なんてないな・・と考えたりして、小学生の頃から感情のコントロールを自然としていましたね。

日下部感情のコントロールを小学生のときに?

上籠兄弟喧嘩して兄に叩かれたら普通は泣きますよね?でも冷静に考えると、泣く理由は親に聞いてほしいから。でも親の注目を得られないのであれば泣いても無駄なので、今は笑ってみるか・・みたいな感じでコントロールしていました。

日下部凄い小学生ですね。うつ病もそうですが、現在は朝からイライラして電車で喧嘩してしまったり、、些細なことで自分や人を責めてしまうなど、感情のコントロールができない人が多いため、心理学が注目されている時代です。世の中には感情のコントロールが出来ない人のほうが圧倒的に多いのに、それを小学生で難なくやったというのは、素晴らしいですね。

真似をしてもらっていい。
僕も、もっと勉強します

日下部淑美

日下部 淑美(くさかべ よしみ)

BODY INVESTMENT代表
フードエリート / 真実の予防医学食研究家 / 管理栄養士

プロフィール

日下部賞を沢山とってきた中で、苦労されたようなことはありますか?

上籠あまりないですね(笑)。周りからは、きっといつか壁にぶち当たると言われていますが、それを壁だと思わないかもしれません。同じことをしても苦労と感じる人と、そうでない人がいるように、結局は気持ちの問題なんですよね。

日下部さすが感情のコントロールができる人ですね(笑)過去にサッカーもやられていますが、サッカーだったら多少ストレスがあったのかもしれませんね。書道は、天性というか、自分のやるべきものに出会えたということなんでしょうね。

上籠昨年の4月にこの銀座の教室を始めたのですが、その前の年の秋まで10年ほどサラリーマンをやっていました。勤め先ではずっと社長秘書をしていましたが、10年後は書家としてやっていこうと考えていましたので、ちょうど10年目の年に退職しました。

日下部では、10年後の先に書家の目標があったのですね。

上籠23歳から週末などを利用して人に教えることをしていましたので、ずっと書家になるイメージがありましたね。

日下部教室はオープンして1年未満ですが、生徒さんは何名くらいいらっしゃるのですか?

上籠50人くらいです。全員大人で、そのうち半分が書家やお習字の先生です。

日下部そうなんですね。ホームページの「生徒さんの声」ページにも、書家の方やお習字の先生、自分の個展を開いているような方が載ってましたね。

上籠最近インスタグラムを始めたのですが、フォロワーの約8割が書家です。

日下部それは凄いですね。書家の方達にも一目おかれている要因は何だと思いますか?

上籠書家や芸術家は書き上げたものを発表し、自分の手の内を明かすようなことはしません。書いている姿は師弟関係であったり、教室でお手本を書いてもらうときにしか見ることができないものですが、僕は出来上がる過程にも芸術的な価値が生まれたら良いと思い、実際に書いている動画をアップしています。
書いている姿を公開するわけですから、ごまかしは利きませんし、もしかしたら、技術を盗まれたり、真似をされるかもしれない。そういうところも人に見せて、真似をしたければ真似をしてもらっていいと思うんです。なぜなら、誰よりも勉強をしていると言えるくらい、僕はもっと勉強します。

日下部その姿勢は凄いですね。

上籠つい最近、半紙1000枚チャレンジというのをやりまして、東京マラソンのスタートと同時に、半紙に五言詩の五文字を1000枚書くのですが、500枚書いたときに3分間休憩をとっただけで、9時間56分かけて書き上げました。
紙をさげる係、出す係、墨を足す係、ナンバリングと日付を打つ係、コメントを読み上げる係をSNSで募り、僕はコメントに応えながら書き続けて、10時間ライブ配信したんです。

日下部凄いですね!

上籠伝統格式の高い書道界は、古き良き考え方の団体です。一方で、やはり時代に合わせて少しずつ変えていければと思っているんです。例えば「一」を書いて、これを裏返すと縦線と同じですよね。これを生徒さんに説明したりするのですが・・・実際に書きますね。

上籠 鈍牛 書

上籠 鈍牛 書

上籠 鈍牛 書

“臓”という字を半紙の裏から横向きの状態で書き、裏返すと“臓”の字に!

日下部え~!すごい!!何を書いているか全く分かりませんでした。これは書家だから出来ることではないですよね?

上籠恐らく、難しいと思います。生徒さんの中に、横線が書けて、縦線が書けない人がいるのですが、そんなことはないんだということを、こんな感じで説明しました。あとは、文字学的なことを理解すると、文字の大切さが分かってもらえると思い、古代文字から現代の文字に変わっていく文字の変遷を実際に書き、その文字が持っている意味を説明します。
昔、牛の肩甲骨や亀の甲羅に描かれた甲骨文字というのがありました。これが文字の始まりで、篆書体、隷書体を経て、この後に人が一般的に書くような書体になっていきます。でもお札には隷書体、印鑑には篆書が今でも使われていて、日本には文字を大切にする文化があることを、このお札や印鑑を見ても理解することができます。

日下部そうなんですね。そういう文字の文化や進化なども教室で伝えているのですか?

上籠文字の成り立ちは教室の体験レッスンで伝えています。例えば、馬、鳥、鹿はこれらの動物が走っている姿を横から表したものです。牛、羊は左右対称となっていて、正面から見た顔になります。横姿の動物は、走ったり飛ぶ姿を目にすることが多いため、その姿がそのまま文字になっており、家畜として飼っていた動物は、正面から見る機会が多いので、文字が顔でイメージされているんです。

日下部なるほど。

上籠右と左の文字の違いや長さの違いは分かりますか?

日下部わからないですね。

上籠右は払いから書いて横棒が長く、左は横棒から書いて払いが長いんです。もともと“漁”という字には魚を取るための両手があって、この左右の手と腕を1画目と2画目の長さの違いで表している。こういう説明をすると小学生でも理解してもらえます。こうやって文字の面白さや大切さをもっとたくさんの人に伝えたいですね。

日下部なるほど~。絵(字)で示しながら変化を書いてもらえると覚えやすいですね。

上籠中学校までは文字の教育的な部分を習うのでお習字、高校以降から表現が加わって書道となります。

日下部書道では自由な書き方でもよいということですね?

上籠はい。書道は黒の芸術ではなく白の芸術で、黒を使っていかに白を綺麗に魅せるか。そういう芸術なんです。

日下部黒く描いた部分ではなく、残された白い部分が大切なんですね。

上籠平面なのに立体に見せる表現であり、強さや温度感を伝えるための技術なんです。僕の教室では、お手本を何度も何度も書いて、言葉では伝わらないことを感覚で伝えています。

日下部五感が鍛えられますね。

上籠そうですね。僕は絵を描くこともあります。米粒にも文字を書くことができますし、この部屋の大きさの紙に書いたとしても一発で収まる字を書くことができます。文章でも、文字の下に文字を書けばいいだけですので、そのまま書いても曲がることはありません。

日下部ただ、鈍牛先生のその優れた感覚は一般的なものではないので、それを伝えることの難しさがあると思うのですが。

上籠難しいです。自分が躓かなかった事を知ることが僕の勉強です。生徒さんから教わることも多いですね。

日下部先生の教室に来ている書家の方は具体的な目的があると思いますが、一般生徒さんは先生の教室の魅力は何だとおっしゃっていますか?

上籠ここは本当に字を上手にしてくれると言ってくれています。僕も生徒さんに育ててもらっているので、上手くなってもらえるよう、自分のレベルをもっともっと上げていければと思っています。年配の男性生徒さんは、本屋で偶然僕の書の本を目にし、ご自身が好きな書家さんの字に似ていたからと、教室に通ってくれるようになりました。その書家さんは僕の師匠の師匠だったんですが。

日下部すごいご縁ですね。他にこの教室が他と違うところって何かありますか?

上籠鈍牛 書

上籠やりたいことがある人には、それに全部応えてあげる指導をしています。例えば、こういう額をいただいたから、その中に入る字を書きたいと言えば、その人が普段書いている字からこんな字がいいのではないかとアドバイスしたり、言葉の意味から、その人に合うものを一緒に見つけて作品を作らせてあげたり、誰かにプレゼントしたいとなれば、一緒に考えて作品を作ったりとか。もちろん毎月の教書雑誌を用いて提出してもうらうこともありますので、それもモチベーションになると思います。

日下部それは楽しいですね。自分の部屋に飾る書を書きたいと言っても、一緒に作品作りをしてくださるんですね。

上籠生徒さんも初心者なのに作品が作れるなんてと喜んでくれていますし、プレゼントされた方は本当に喜んでもらえたとおっしゃっています。それがきっかけになって次はこういうものを書きたいと進歩していくんですよね。それと、うちの教室は手ぶらで参加できます。半紙も筆も墨も使いたい放題です(笑)。

技術を突き詰めたら、次はその技術を削ぎ落していく

日下部淑美

日下部プロフィールを拝見させていただいたのですが、字を読むことが困難な難読症(ディスレクシア障がい)なんですね。

上籠はい。気づいたのは社会人になってからですが、日常の生活などには全く問題ありません。

日下部学生のときは読書や長文のテストってありましたよね?

上籠いつも友人や親切な方々に助けてもらっていました。

日下部華々しい賞をたくさん獲得されているだけでなく、最年少での受賞もされているようで、本当に素晴らしいですね。ところで社会人になって障がいに気づいたきっかけな何だったんですか?

上籠文字が文章として頭に入ってこないので、学生時代は新聞も漫画も読んだことがありませんでした。国語は音読ができないので、高校のテストではビリばかりで、算数も文章で書いてある問題を理解できずに苦労しました。文字だけでなく数字も苦手なんです。
補講をちゃんと受けていたので、単位はなんとか取れましたが、赤点ばかりだったので、自分はバカなんだと思っていたんです。
この話を中学校の先生方が集まる懇親会で話したら、そういう研究をしている先生がいて、もしかしたら難読症かもしれないからと、病院を紹介され検査したら、その通りだったんです。
正直、日常生活では何も困っていませんし、障がいがあると感性が豊かだったりしますので、それを人生の強みにして生きていければと思っています。

日下部数字も苦手なんですね。

上籠映像で記憶するので、辞書で「○○ページ参照」と書いてあっても、そのページにたどり着くことができないんです。もう一度映像を思い出して、数字を入れ替えたりすると辿り着けるのですが、暗証番号やパスワード等は毎回更新しています(笑)
でも自然とそういうことをずっとやってきているので、それに違和感は感じていません。

日下部なるほど、セキュリティ的には安全ですね(笑)。文字を書くということには問題ないのですか?

上籠問題ないです。基本的には漢詩の本を脳を通さずに見て、書いています。

日下部文字を読んで意味を理解して書くというよりは、絵のような感じですね。

上籠そうですね。文字がどう変形してきたかとか、並びなどには記憶力が働くんです。例えば、千文字書いても、この字の後にこの字を書いたという具合に覚えていられます。人の名前は覚えられませんが、鉛筆ではなく筆で一度書くと、一文字一文字、思い出すことができて、最後にそれを並べると名前になっているんです。

日下部文字というのは同じものを書いても、同じように表現するのは、難しいと言われていますが、もしかして再現も得意なのでしょうか?

上籠 鈍牛

上籠古典を勉強して様々な表現方法が自分の引き出しに入れば、その形を変えることで新しいものを表現をすることもできますし、全く同じものを書くこともできます。
芸術家が“偶然の線”などと言うのは、出来ない人が使う言葉で、本来は絶対引けない線はないところまで鍛錬し、100回書けば100回とも同じ線が引けるようになるべきなのです。

日下部なるほど。ピカソは抽象画で有名ですが、もともとはしっかりとしたデッサンを描いていて、模写がとても上手かったからこそ、抽象画でも評価されましたが、書道でも同じということですね。

上籠書道に関わらず、どんなことでもそうだと思います。例えばマイケルジャクソンのダンスは、人が出来ないことをやっているわけではなく、基本的なことを組み合わせて、みんなが気絶するようなダンスを踊るわけです。新しいものを生み出そうとし過ぎる人が最近多いですが、中国3000年以上の書道の歴史があり、そこから残ってきたものを、今僕らが目にしている。そういうことを勉強することが大事なのだと思います。
呼吸と同じで、空気を吸って吐き出すと、そこに自分のエッセンスが加わる。それが新しいものであり、進化であると僕は思います。

日下部茶道や華道、剣道など、「道」のつくものは型を真似ることから入ると言われますよね。そして型を学んだ後に見えてくる深い学びがある。型から入って型で終わるのではなく、その先にたくさんの学びや気付きがあるから終わりがない。書道も同じですね。
鈍牛先生は、史上最年少で多くの賞を取得されていらっしゃいますが、それなりの年月を経て取得した場合との違いってあると思いますか?

上籠月日が経てば経つほど、吸収できる時間も多くなり、引き出しも増えますので、やはり僕のピークは晩年になると思います。スポーツとは、また違った世界なんですよね。

日下部書道は晩年がピークなんですね。

上籠100%できる技術を磨いたり、引き出しを増やしたり、これからもずっと勉強し続けていかないといけません。しかし、表現していく上で、“見せたい見せたい”ではダメで、技術を高めていったら、次は自分の技術を削ぎ落す作業が必要になっていくんです。
例えばゴルフ場でドライバーを満振りしている人も、ゴルフ経験も長くなると自分の力量や飛ばせる距離、次はどう飛ばせばいいか、角度はどうすればいいかなど考慮してスコアを上げていくことができます。

銀座書道教室

ここを活かすためにここを抑える、できる技術の中で技術を隠していく、そういったことができるのは熟練の技です。
どんなことでも緩急が必要で、線の太い細い、墨色の濃い薄い、広い狭い等、真逆を表現することで表現力は高まります。しかし、表現力を高め過ぎると今度は全てが騒がしくなり、見るに堪えない状況になってしまう。これからはそういうことが見極められる感性をどんどん磨いていく必要があると思っています。

日本人の美学や感覚が溢れている書道
筆一本で表現できる技術は素晴らしい

上籠 鈍牛 著「上手くなるための書道レッスン 楷書」

日下部鈍牛先生の書のイベントなどはあったりするのですか?

上籠2020年から僕の一門展を始めようと考えていて、そこから毎年銀座でグループ展を50回開催することが目標です。その時には僕も85歳なんですけど(笑)。人に見てもらう機会を作り、さらには自分の作品に値段が付くという経験を皆さんにしてもらいたいと思っています。

日下部自分の作品が売れるなんて、テンションがあがりますね!

上籠銀座という街だからできることかもしれませんが、書道など「道」のつく世界はお金がかかる世界なので、自分の作品が売れたり、作家活動を応援してくれるスポンサーが現れるなど、書で食べていける時代を作りたいと思っています。
今はまだ考えている段階ですが、会社のエントランスにおく観葉植物のレンタルサービスのように、書も作家さん達に作品を提供してもらい、毎月違った書をリースで提供していくことを考えています。

日下部それはいいですね。“今月の一言”とか、楽しみにする社員も出てきそうです。最近は、武田双雲さんなど、書でも注目を集めている方が出てきていますよね。

上籠僕らがやっている書道は歴史に裏付けされた伝統的な書道を基本にしているので、露出するよりは、自分と向き合っていく世界なんです。でも書道を身近に感じてもらえるような普及活動をしてくださっているという点では、有り難い存在だと思っています。

日下部自分と向き合うとおっしゃいましたが、最近はマインドフルネスという、自分を無にして自分と向き合う時間をつくる瞑想も注目されていますよね。経営者の中でも成功しているような方は、結構な確率で瞑想をしているみたいです。書道も同じような効果がありそうですね。

上籠写経も無心で写すというものなので、最近人気があるのも納得できますね。
2年後に向けて教育現場でも学習指導要領が変わり、今までは小学校3年生から習字を始めて、中学校まで行書をやっていたのが、新しい制度では小学校1年生から水書が始まり中学校3年生から表現に変わることになりました。実施は再来年になりますが、書道が教育の中で見直されたことは嬉しいですね。また、ユネスコ無形文化財に日本の書道文化を登録しようと長く活動を続けいているのですが、うまくいけば2年後に書初めなど、日本独自の書道文化が無形文化財になるかもしれません。できればオリンピックで書を表に出せたらいいな、とずっと思っています。
昔、ピカソに絵を習いに行った日本人がいたそうなのですが、ピカソは「日本には墨があるではないか、墨は絵の具にはない無限の色をもっている」と言ったそうです。
ただの毛の束から、ピリッとした線を描いたり、筆一本で自在に表現できる書道の技術って本当にすごいと思うんです。ひらがなの流麗さ、そして山や自然の景色から散らしという芸術性が生まれてきたり、日本人が持っている美学や感覚で溢れているのが日本の書道なので、世界に評価されるときが必ず来ます。早ければ2年後に大きな波がくると思っています。

日下部そうなったら、教室も生徒さん殺到でキャンセル待ち状態ですね(笑)。

上籠それと僕も6m四方の紙に書いたことがあるのですが、書道は体力勝負なんです。スポーツをやっている人は動体視力が良いので書道が上手いのですが、出来上がったものを真似るというよりは、書いている姿、筆の角度や速度感を真似ることが出来るんです。

日下部なるほど。

上籠そういう面から、パラリンピック選手のようにハンデのある人たちがスポーツのように書道をするというのを、一緒にやりたいと思い、義足とか義手を作る技師さんに会いに行ったこともあるんです。いろいろ考えてはいるものの、なかなか簡単ではありませんが。

日下部これから大きな波が来るということなので、これからまだまだ攻めの体制で行けそうですね。その他にこれからの展望はありますか?

上籠 鈍牛

上籠書いている姿を動画で公開するのもそうですが、お堅いイメージの書道の世界でもデモンストレーションの機会が増えてきていますので、時代に合わせた価値の創造をしたいですね。
また、子供達に文字の大切さ面白さを伝えていけるような活動をしたいと思っています。毎年春に行われる1万人規模の展覧会では、上野動物園とサンシャイン水族館とコラボして“文字の動物園”、“文字の水族館”という企画を開催します。台東区と豊島区の小学校で僕らが授業をしたのですが、子供達に文字の面白さを理解してもらい、魚や動物の文字を書いてもらいました。それを大きい動物園や水槽をイメージしたところに展示するんです。

日下部素晴らしい活動ですね。

上籠思っていた以上に、子供たちも喜んでくれて、書道を楽しいと思ってもらえたようです。

日下部話は変わりますがご自身の健康管理などで取り組まれていることはありますか?

上籠去年の2月に突然入籍をしまして。

日下部突然?電撃結婚というやつですか?(笑)

上籠はい。電撃です。交際0日婚です。友人関係ではあったのですが、二人で食事に行ったのは1回だけです。僕はあと10年は結婚する気がなかったのですが、なんとなく意見が合致してしまい、2週間後くらいに結婚してしまったんです。

日下部お付き合いしましょう、ではなくて?相当意気投合したんですね(笑)

上籠妻は産業保健師をしておりまして、責任感の強い人なんです。妻は、“この馬は絶対に走る。この馬に人生を賭ける、私が馬主になる”という話なんです(笑)。“その代り、体調管理は私が徹底的にやります!”ということを言われています。生活のリズムが違ったりするのですが、ちゃんとご飯を用意してくれて、野菜も多くバランスを考えて作ってくれています。

日下部それはありがたいですね。

上籠書の世界は長生きが絶対条件なので、ほんとうにありがたいです。長生きさせてもらえるならいいかなと、僕の意見にも合致したんです。“実際は失敗するかもしれない。でもこの人が失敗するなら誰がやっても失敗するだろう”と、僕を信じて結婚してくれました。

日下部素敵な奥様ですね。では、外食も減りましたか?

上籠僕は結婚するまでは週6で飲んでいましたが、今は週1~2回になりました。健康診断も妻が申込んで予定を組んでくれますし、診断結果も妻が見て改善が必要なことは具体的な策を考えてくれています。5月からは一緒にジムに通う予定なんです。

日下部至れり尽くせりですね。書道を楽しみながら感情をコントロールして、食事や体力は奥様が管理してくれていれば、長生きもできますね。

上籠そうですね。僕は本当に書道が好きです。生徒さんがいなくても、仕事ではなくても、書をひたすら書いています。書には性格が出ますし、字をみればその時の気分も分かりますので、生徒さんの書をみているだけでも楽しいですね。

日下部もし、この教室に通うとこんないいことがあるよ、と言うとしたら一言で何といいますか?

上籠絶対に書道が楽しいと思わせる自信があります。だって、僕が一番楽しんでいますから(笑)

日下部楽しませてあげるっていいですね。最後に鈍牛先生にとって書とは何ですか?

上籠僕自身が書だと思っています。体の一部のような。

日下部だからこそ、最年少で多くの賞をとることができたのでしょうね。書道が大好きで、とても楽しんでいるというのが伝わりました。今日はありがとうございました。

上籠 鈍牛・日下部淑美

日下部淑美からひとこと

好きだから楽しんで追究できる。そしてその楽しさを自分が楽しむことで人に伝えられるのは、見ている側もとても気持ちが良いものだと感じました。人が本心から楽しんで取り組む姿は、間違いなく人を魅了するようです。
人に楽しさを伝えたいなら、まずは自分が楽しむこと。どんなときも “自分が先”なんですね。

会社データ 関連リンク

銀座書道教室

東京都中央区銀座6-13-5 銀座NHビル8階

TEL: 050-3559-7575

代表者:上籠 鈍牛

銀座書道教室

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